鍵開けの呪文

鍵開けの呪文 (Unlocking Charm) は、扉や窓の鍵を開ける呪文です。呪文は「アロホモラ」(Alohomora)[1]。杖をひと振りするだけで足りますが[2]、強い魔法で閉ざされた扉には通じません[3]

基本情報

呪文: アロホモラ(Alohomora
別名: 泥棒の強ーい味方[2:1]
分類: 呪文(charm)
効果: 扉や窓の鍵を開ける
杖の動き: 下から上へ上げ、斜めに下ろし、横に引く[2:2]
対抗呪文: アロホモラよけの呪文[2:3]

効果

鍵のかかった扉や窓に杖を向け、「アロホモラ」と唱えると錠が外れます。原作での初出は、ハリーたちが真夜中の廊下でピーブズに追われ、逃げ込む先を探した場面です[1:1]

『ハリー・ポッターと賢者の石』第9章「真夜中の決闘」

ハーマイオニーは押し殺したような声でそう言うと、ハリーの杖をひったくり、鍵を杖で軽く叩き、呟いた。

「アロホモラ!」

カチッと鍵が開き、ドアがパッと開いた――四人は折り重なってなだれ込み、急いでドアを閉めた。

対象は扉に限りません。ハーマイオニーは叫びの屋敷の窓をこの呪文で開け、バックビークが飛び込めるようにしています[4]

一方で、強い魔法のかかった扉には効きません。ホグワーツの門の閂に唱えたハリーは、何も起こらずに立ち尽くしました[3:1]

『ハリー・ポッターと謎のプリンス』第8章「勝ち誇るスネイプ」

「アロホモーラ!」

杖を閂に向け、ハリーは自信を持って唱えたが、何も起こらない。

「そんなもの通じないよ」トンクスが言った。「ダンブルドア自身が魔法をかけたんだ」

同じことは、フラッフィーの番をしている部屋の扉[5]や、魔法省の神秘部で三人が開けようとした扉[6]でも起きています。

日本語版の表記は揺れています。『賢者の石』『アズカバンの囚人』と『不死鳥の騎士団』第29章は「アロホモラ」、『不死鳥の騎士団』の第23章・第34章・第35章、『謎のプリンス』『死の秘宝』『呪いの子』は「アロホモーラ」です。

イギリスに伝わるまで

J.K. ローリングがテキストを執筆したPS3ゲーム「ブックオブスペルズ」は、この呪文がイギリスに伝わった経緯を語っています[2:4]

盗みの罰から逃れるためにイギリスからアフリカへ逃げていた盗っ人の魔法使い、エルドン・エルズリックルが、1600年代の初めにこの呪文を持ち帰りました。いにしえのアフリカの賢者から学んだもので、別名を「鍵開けの呪文」、あるいは「泥棒の強ーい味方」といいます[2:5]

エルズリックルが変装して国に戻ったとき、手にしていたお宝は2つありました。ひとつがこの呪文、もうひとつはヌンドゥの赤ん坊です。ヒョウに似たこの魔法生物は、大人になれば大勢の人間をひと呑みにしてしまいますが、子どものうちは失神呪文で倒せます。エルズリックルは留守のあいだ、これに家を守らせました[2:6]

呪文を手にしたエルズリックルは泥棒稼業に戻り、ロンドンでは魔法族の家もマグルの家も安全ではなくなりました。窓も壊さず梯子も使わずに出入りするこの犯人は、両方の世界で新聞の一面を飾ります。魔法使いの家で鉢合わせたときには、見逃してくれれば呪文を教えると持ちかけ、その取引を繰り返した結果、ロンドンには同じ手口の泥棒が何人も現れました[2:7]

エルズリックルは自分の家が破られるとは考えていませんでした。ヌンドゥがいることは誰もが知っており、朝は鍵穴越しに魔法をかけて眠らせてから入り、夜は出てから同じように起こしていたからです[2:8]

終わりは、2週間で19回も泥棒に入られた魔法使いブラグドン・ブレイが「アロホモラよけの呪文」を発明したことで訪れました。一夜にしてロンドン中の魔法使いの家が侵入不可能になり、マグルの家にも警備が回されます。一晩なにも盗めずに帰ってきたエルズリックルは、疲れと苛立ちからヌンドゥを眠らせるのを忘れて家に入りました[2:9]

PS3ゲーム「ブックオブスペルズ」

ヌンドゥに食われてしまうその前に、エルズリックルが発した最後の言葉は、「アロホモラ」

アロホモラよけの呪文

ブラグドン・ブレイが発明した「アロホモラよけの呪文」をかけた扉は、鍵開けの呪文では開きません[2:10]

原作にこの対抗呪文の名は出てきません。ただし、扉に鍵開けの呪文よけをかけておくという発想は原作にもあります。アンブリッジの部屋に忍び込む算段を立てたハリーは、シリウスからもらった「どんな錠でも開けるナイフ」を持ち出す理由をこう説明しました[7]

『ハリー・ポッターと不死鳥の騎士団』第29章「進路指導」

「一昨年のクリスマスに、シリウスが、どんな錠でも開けるナイフをくれたんだ」ハリーが言った。「だから、あいつがドアに呪文をかけて、アロホモラが効かないようにしていても、絶対にそうしてるはずだけど――」

先に使われていた呪文

「ブックオブスペルズ」によれば、鍵開けの呪文が知られる前に錠を開ける呪文として広く使われていたのは Portaberto でした。錠を扉から砕き取るもので、鍵のあった場所に煙の立つ穴が残ることもあったといいます。さらにその前に使われていた Open Sesame! は、扉を蝶番ごと引きちぎって薪に変えてしまうものだったので、これでもかなりの改良でした[2:11]

使用例

使用者 場面 効果・結果
ハーマイオニー 『賢者の石』第9章 真夜中の廊下で鍵のかかった扉を開け、フィルチから逃れる[1:2]
ハーマイオニー 『賢者の石』第16章 フラッフィーのいる部屋の扉には効かなかった[5:1]
ハーマイオニー 『アズカバンの囚人』第21章 叫びの屋敷の窓を開け、バックビークを迎え入れる[4:1]
癒者 『不死鳥の騎士団』第23章 聖マンゴのヤヌス・シッキー病棟の扉を開ける[8]
ハーマイオニー 『不死鳥の騎士団』第34章 神秘部の扉には効かなかった[6:1]
死喰い人 『不死鳥の騎士団』第35章 ハーマイオニーが呪文で封じた扉をこじ開ける[9]
ハリー 『謎のプリンス』第8章 ホグワーツの門の閂には効かなかった[3:2]
ハーマイオニー 『死の秘宝』第10章 グリモールド・プレイスでレギュラスの部屋を開ける[10]
スコーピウス 『呪いの子』第一幕 ハリーに変身して魔法大臣の執務室に入る[11]
アルバス 『呪いの子』第四幕 2つの扉を同時に開け、隠れていた大人たちを戦いに加える[12]

登場・言及箇所

脚注


  1. 『ハリー・ポッターと賢者の石』第9章「真夜中の決闘」 ↩︎ ↩︎ ↩︎

  2. PS3ゲーム「ブックオブスペルズ」(2012年)。J.K. ローリング執筆のゲーム内テキスト ↩︎ ↩︎ ↩︎ ↩︎ ↩︎ ↩︎ ↩︎ ↩︎ ↩︎ ↩︎ ↩︎ ↩︎

  3. 『ハリー・ポッターと謎のプリンス』第8章「勝ち誇るスネイプ」 ↩︎ ↩︎ ↩︎

  4. 『ハリー・ポッターとアズカバンの囚人』第21章「ハーマイオニーの秘密」 ↩︎ ↩︎

  5. 『ハリー・ポッターと賢者の石』第16章「仕掛けられた罠」 ↩︎ ↩︎

  6. 『ハリー・ポッターと不死鳥の騎士団』第34章「神秘部」 ↩︎ ↩︎

  7. 『ハリー・ポッターと不死鳥の騎士団』第29章「進路指導」 ↩︎

  8. 『ハリー・ポッターと不死鳥の騎士団』第23章「隔離病棟のクリスマス」 ↩︎

  9. 『ハリー・ポッターと不死鳥の騎士団』第35章「ベールの彼方に」 ↩︎

  10. 『ハリー・ポッターと死の秘宝』第10章「クリーチャー語る」 ↩︎

  11. 『ハリー・ポッターと呪いの子』第一幕第18場 ↩︎

  12. 『ハリー・ポッターと呪いの子』第四幕第11場 ↩︎