嘆きのマートル(Moaning Myrtle) は、ホグワーツ魔法魔術学校の使われていない女子トイレに取り憑くゴーストです。マグル生まれの生徒として「秘密の部屋」の怪物に襲われて死に、自分をからかっていた同級生に取り憑くために学校へ戻ってきました。本名はマートル・エリザベス・ワレンといいます。
名前: マートル・エリザベス・ワレン(Myrtle Elizabeth Warren)
別名: 嘆きのマートル
死亡: ホグワーツ在学中(年は語られていません)
性別: 女性
血統: マグル生まれ
種: ゴースト(生前は魔女)
出身校: ホグワーツ魔法魔術学校(レイブンクロー寮)
来歴
ホグワーツ時代
マートルが在籍していたのはレイブンクロー寮です。J.K. ローリングは旧公式サイトの F.A.Q. で、ニンファドーラ・トンクスとマートルの寮を尋ねられ、それぞれハッフルパフとレイブンクローだと答えています。この受け答えに公式の日本語訳はありません[1]。
Hufflepuff and Ravenclaw respectively.
(それぞれハッフルパフとレイブンクローです)
在学中のマートルはいじめの標的でした。とくにオリーブ・ホーンビーからはメガネのことをからかわれています[2]。
ポッターモアに寄せた文章で、ローリングはホーンビーをマートルの「最大のライバルでいじめっ子」と呼んでいます[3]。
死んだ日も、マートルはホーンビーにメガネをからかわれて女子トイレの個室にこもり、鍵をかけて泣いていました。そこへ誰かが入ってきて、聞き慣れない言葉を話します。声が男子のものだと気づいたマートルは、出ていくよう言うつもりで鍵を開け、そこで死にました[2:1]。
「まさにここだったの。この小部屋で死んだのよ。よく覚えてるわ。オリーブ・ホーンビーがわたしのメガネのことをからかったものだから、ここに隠れたの。鍵を掛けて泣いていたら、誰かが入ってきたわ。何か変なことを言ってた。外国語だった、と思うわ。とにかく、いやだったのは、しゃべってるのが男子だったってこと。だから、出ていけ、男子トイレを使えって言うつもりで、鍵を開けて、そして――」マートルは偉そうにそっくり返って、顔を輝かせた。
「死んだの」
「どうやって?」ハリーが聞いた。
「わからない」マートルがひそひそ声になった。
「覚えてるのは大きな黄色い目玉が二つ。体全体がギュッと金縛りにあったみたいで、それからふーっと浮いて……」
マートルが見た大きな黄色い目は、「秘密の部屋」に棲むバジリスクのものでした。部屋を開けたのは、当時ホグワーツの生徒だったトム・リドル——のちのヴォルデモート卿です。死んだ年は原作に書かれておらず、ハリーたちが在学した1992年から1993年にかけての出来事から見て「五十年前」と語られるだけです[4]。当時の校長はアーマンド・ディペットでした[5]。
マートルはマグル生まれでした。サラザール・スリザリンが「秘密の部屋」を作ったという伝説では、部屋に潜む怪物は「魔法を学ぶにふさわしからざる者」——マグルの親を持つ生徒——を学校から追い出すためのものとされています[6]。五十年後、ドラコ・マルフォイは前に部屋が開かれたときのことをこう話しています[7]。
でも、一つだけ知っている。この前『秘密の部屋』が開かれた時、『穢れた血』が一人死んだ。だから、今度も時間の問題だ。あいつらのうち誰かが殺される。グレンジャーだといいのに
この死には、原作の本文には書かれていない意味があります。ローリングは2007年のライブチャットで、ヴォルデモートが分霊箱をつくるために殺した相手を分霊箱ごとに挙げ、日記の犠牲者はマートルだったと答えました。この発言に公式の日本語訳はありません[10]。
The diary - Moaning Myrtle.
(日記は——嘆きのマートル)
ゴーストになってから
マートルは死んだあと、自分をいじめたホーンビーに取り憑くために学校へ戻ってきました。遺体を見つけたのもホーンビーで、ディペット校長に言われてマートルを探しにきたところでした[5:1]。
「ええ、そうよ。マートルが死んだことなんか、簡単に忘れるんだわ」マートルは喉をゴクンと鳴らし、泣き腫らした目でハリーを見た。「生きてるときだって、わたしがいなくても誰も寂しがらなかった。わたしの死体だって、何時間も何時間も気づかれずに放って置かれた――わたし知ってるわ。あそこに座ってみんなを待ってたんだもの。オリーブ・ホーンビーがトイレに入ってきたわ――『マートル、あんた、またここにいるの? すねちゃって』そう言ったの。『ディペット先生が、あんたを探してきなさいっておっしゃるから――』そして、オリーブはわたしの死体を見たわ……うぅぅぅー、オリーブは死ぬまでそのことを忘れなかった。わたしが忘れさせなかったもの……取り憑いて、思い出させてやった。そうよ。オリーブの兄さんの結婚式のこと、覚えてるけど――」
つきまといをやめさせるためにホーンビーが魔法省に訴え出たため、マートルは学校に戻り、自分が死んだトイレに住むようになりました[5:2]。この2階の女子トイレは使用禁止のまま、マートルの住処になっています[11]。
1992年‐1993年
ハリーが2年生だった年、マートルはほとんど首無しニックの絶命日パーティでハーマイオニーたちと顔を合わせます。そこでピーブズに陰口を告げ口され、泣いて逃げ出しました[12]。
その後、猫が襲われた夜に何か見なかったかを尋ねに来た3人には答えず、自分の不幸を訴えてトイレに飛び込みます[6:1]。3人はこの使われていないトイレをポリジュース薬を煎じる場所に使い、薬を飲んで猫に変じてしまったハーマイオニーを見て、マートルは声を上げて喜びました[7:1]。
廊下に水が溢れた日、様子を見に行った3人にマートルは、頭の上から本を投げつけられたと訴えます。その本が、床に落ちていたトム・リドルの日記でした[4:1]。
やがてハリーは、アラゴグから「殺された女の子の死体は、トイレで発見された」と聞き、その少女がマートルではないかとロンに問いかけます[8:1]。マートル本人から死の様子を聞き出したハリーは、水回りの蛇口に刻まれた蛇から「秘密の部屋」の入口を見つけました[2:2][9:1]。
部屋から戻ったハリーたちを、マートルはトイレで迎えました[13]。
「あぁ……わたし、ちょうど考えてたの。もしあんたが死んだら、わたしのトイレに一緒に住んでもらったらうれしいって」
1994年‐1995年
三大魔法学校対抗試合の年、マートルは監督生用の浴室に現れ、金の卵を水の中で開けるようハリーに教えました。卵の歌が水中人のものだという見当も、マートルとのやりとりから立ちます[5:3]。第二の課題では湖に潜ったハリーの前に現れ、グリンデローの群れを避けて進むよう指し示しました[14]。
1996年‐1997年
ハリーが6年生の年、マートルは男子トイレに現れてハリーとロンの会話に割り込みます。ここでマートルは、自分に会いに来る男の子がいると匂わせました[15]。
「だけど、ほかの場所を訪問できないってことじゃないわ。あなたに会いに、一度お風呂場に行ったこと、憶えてる?」
その相手はドラコ・マルフォイでした。のちにハリーは、男子トイレでマートルに慰められているドラコに出くわします。二人の決闘でハリーがセクタムセンプラを放ち、ドラコが血を流して倒れると、マートルは絶叫しました。その後は城じゅうのトイレを回り、この一件を言いふらしています[16]。
2020年代
『ハリー・ポッターと呪いの子』では、アルバス・セブルス・ポッターとスコーピウス・マルフォイの前に現れます。ここでマートルは自分のフルネームを明かしました[17]。
嘆きのマートル そのとおり――マートルよ。マートル・エリザベス・ワレン――かわいい名前――わたしの名前よ。嘆きの、は要らない。
マートルは、監督生用の浴室の流し口から湖へ直接抜けるパイプがあることを二人に教え、逆転時計を使った計画に手を貸します[17:1]。
外見
小柄でずんぐりとした女の子のゴーストです。ハリーがそれまで見たなかで一番陰気くさい顔をしており、その顔もダラーッと垂れた猫っ毛と、分厚い乳白色のメガネに半分隠れています[12:1]。顎にはにきびがあり、話しながらつぶしていることがあります[5:4][15:1]。
性格・人物像
マートルは自分が死んでいることに敏感です。ハリーが浴室で「どうやって息をすればいいのか」と口にしただけで涙を溢れさせ、自分は息をしていないと訴えました。ハリーの知っているほかのゴーストは、誰もそんな大騒ぎはしません[5:5]。
生前も死後もいじめの対象で、ピーブズには外見をあげつらわれます。陰で何と呼ばれているかを本人が並べる場面があります[12:2]。
「みんなが陰で、わたしのこと何て呼んでるか、知らないとでも思ってるの? 太っちょマートル、ブスのマートル、惨め屋・うめき屋・ふさぎ屋マートル!」
その一方で、他人の不運を面白がるところもあります。ポリジュース薬に失敗して顔に毛が生えたハーマイオニーを見て楽しそうにし[5:6]、セクタムセンプラの一件では、泣き喚きながらだんだんそれを楽しんでいるのが誰の目にも明らかでした[16:1]。ドラコのことは誰にも言わないと言い張っていましたが[15:2]、決闘の一件のほうは城じゅうを回って触れ歩きました[16:2]。
人間関係
オリーブ・ホーンビー
同じ時期にホグワーツにいた生徒で、マートルのメガネをからかっていました[2:3]。マートルが死後もこの世に留まったのは、ホーンビーに取り憑くためです。兄の結婚式にまで現れて死体を見た日のことを思い出させ続け、最後はホーンビーが魔法省に訴え出て止めさせました[5:7]。
ハリー・ポッター
マートルはハリーに好意を寄せています。「秘密の部屋」から戻ったハリーに、死んだら自分のトイレに一緒に住んでほしかったと打ち明け、頬を銀色に染めました[13:1]。監督生用の浴室では入浴中のハリーの前に現れ[5:8]、6年生の年には、何か月も訪ねて来なかったと責めています[15:3]。助言を惜しまない相手でもあり、金の卵の解き方も第二の課題の道筋も、マートルの言葉が手がかりになりました[5:9][14:1]。
舞台裏
ローリングはポッターモアで、マートルを思いついたきっかけを書いています[3:1]。
「嘆きのマートル」を思いついたきっかけは、私が若いころ、とくにパーティー会場やディスコのトイレで女の子が泣いている姿をよく目にしていたことでした。男性用トイレではあまり見られない光景のようなので、『ハリー・ポッターと秘密の部屋』と『ハリー・ポッターと謎のプリンス 』で、そうした居心地の悪い不慣れな状況にハリーとロンを置いてみるのは、著者として楽しいことでした。
同じ文章によれば、ホグワーツのゴーストを書き留めた最初のリストでは、マートルの名は「めそめそワンダ」でした[3:2]。
初期の段階で書き留めてあったホグワーツのゴーストのリストには、マートル(当初は「めそめそワンダ」という名前でした)、ビンズ先生、「灰色のレディ(当初の名前は「ひそひそレディ」)」、そして「血みどろ男爵」が載っています。
フルネームが読者に知られたのは『ハリー・ポッターと呪いの子』の刊行より前で、2015年5月11日にローリングが Twitter で答えたのが最初です。この投稿に公式の日本語訳はありません[18]。
Moaning Myrtle's full name was Myrtle Elizabeth Warren.
(嘆きのマートルのフルネームはマートル・エリザベス・ワレンでした)
登場・言及箇所
- 『ハリー・ポッターと秘密の部屋』
- 第8章「絶命日パーティ」
- 第9章「壁に書かれた文字」
- 第12章「ポリジュース薬」
- 第13章「重大秘密の日記」
- 第15章「アラゴグ」
- 第16章「秘密の部屋」
- 第17章「スリザリンの継承者」
- 第18章「ドビーのごほうび」
- 『ハリー・ポッターと炎のゴブレット』
- 第22章「予期せぬ課題」
- 第25章「玉子と目玉」
- 第26章「第二の課題」
- 『ハリー・ポッターと謎のプリンス』
- 第5章「ヌラーがべっとり」
- 第15章「破れぬ誓い」
- 第21章「不可知の部屋」
- 第24章「セクタムセンプラ」
- 『ハリー・ポッターと呪いの子』
- 第2幕
- 第3幕
- ポッターモア J.K.ローリングからの新着コンテンツ「ホグワーツのゴースト」
- J.K. ローリング旧公式サイト「What houses were Tonks and Myrtle in?」
- J.K. ローリングのライブチャット(2007年7月30日)
- J.K. ローリング Twitter 投稿(2015年5月11日)