リーマス・ルーピンは混血の魔法使いであり、幼少期にフェンリール・グレイバックに噛まれたことで狼人間となりながらもホグワーツ魔法魔術学校に通い、ジェームズ・ポッターシリウス・ブラックピーター・ペティグリューと「いたずら仕掛け人」を結成して忍びの地図を作り上げた人物です。第二次魔法戦争では不死鳥の騎士団の一員として、またホグワーツ3年生担当の「闇の魔術に対する防衛術」教授としてハリー・ポッターの人生に深く関わり、ニンファドーラ・トンクスと結婚して息子テッド(テディ)をもうけた後、ホグワーツの戦いで命を落としました。

人物情報

名前: リーマス・ジョン・ルーピン(Remus John Lupin)
別名: ルーピン教授、ムーニー(Moony)
生まれ: 1960年3月10日(ポッターモア)
死亡: 1998年5月2日、ホグワーツの戦いにて
性別: 男性
血統: 混血(父ライアル・ルーピンは魔法使い、母ホープ・ハウエルはマグル)
種: 人間・魔法族(狼人間)

魔法特性

杖: 糸杉材、ユニコーンの毛、10インチ4分の1(ポッターモア)
守護霊: 狼(wolf)
ボガート: 満月
特殊能力: 狼人間(満月の夜に変身)

所属

出身校: ホグワーツ魔法魔術学校グリフィンドール寮
団体: 不死鳥の騎士団、いたずら仕掛け人(The Marauders)
職業: 闇の魔術に対する防衛術教授(1993〜94年)、不死鳥の騎士団員

家族

来歴

生い立ち

リーマス・ジョン・ルーピンは1960年3月10日に生まれました(ポッターモア)。父ライアル・ルーピンは魔法省に勤める魔法使いで、「非人間的精霊現象」を専門とする研究者でした。母ホープ・ハウエルはマグルでしたが、息子が魔法族であることを知り、父の世界を受け入れていたとされています(ポッターモア)。

リーマスが4〜5歳頃のこと、父ライアルは職務上の場で狼人間のフェンリール・グレイバックと関わることになりました。ライアルは魔法省の場でグレイバックについて「魂のない悪であり、死に値する」という趣旨の厳しい発言をしたとされています(ポッターモア)。グレイバックはこの侮辱に対する報復として、幼いリーマスに狙いを定めました。ある夜、グレイバックはルーピン家に侵入し、眠っていた幼いリーマスを噛んだのです。

こうしてリーマスは、自分の意思とはまったく無関係に、父が引き起こした争いの巻き添えとして狼人間になりました。

ホグワーツ時代

入学への道

狼人間として生まれた少年が魔法学校に通うことは、当時の魔法界では想像もされていませんでした。アルバス・ダンブルドアは例外的にリーマスのホグワーツ入学を許可し、毎月の変身期間を管理するための特別な措置を整えました。ホグワーツ敷地内に暴れ柳(Whomping Willow)を植え、その根元にある地下通路を叫びの屋敷(Shrieking Shack)へとつなぎ、リーマスが安全に変身できる隔離された場所を確保したのです(HP3-17)。リーマスは毎月満月が近づくと「マダム・ポンフリーに会いに行く」という口実のもとで地下通路を通り、叫びの屋敷で変身期間を過ごしました。

村人たちは叫びの屋敷から聞こえてくる恐ろしい音を「イギリス中で最も出没率が高い幽霊屋敷」の証拠だと信じていましたが(HP3-10)、実際にはリーマスの苦しみの声でした。

いたずら仕掛け人との友情

ホグワーツに入学したリーマスは、グリフィンドール寮ジェームズ・ポッターシリウス・ブラックピーター・ペティグリューと出会い、かけがえのない友情を育てました。三人はリーマスが毎月姿を消す理由をやがて突き止め、狼人間であることを知りました。しかし彼らは恐れもせず、また距離を置くこともありませんでした。

ジェームズ・シリウス・ピーターの三人は、狼人間の変身期に友人として付き添うための方法として、3年がかりで「動物もどき(アニメーガス)」の変身を習得しました(HP3-17)。ジェームズは牡鹿(プロングズ)、シリウスは大型犬(パッドフット)、ピーターはネズミ(ワームテール)となり、それぞれが動物の姿でリーマスの変身期間に同行しました。動物の仲間と過ごすリーマスは、一人で変身する時よりも格段に穏やかだったと描写されています(HP3-17)。

四人はそれぞれのアニメーガス形態と、リーマスの狼人間(Moony)にちなんで「いたずら仕掛け人(The Marauders)」を名乗り、ホグワーツの全地図を記録した忍びの地図を作り上げました。地図には「ムーニー、ワームテール、パッドフット、プロングズ謹呈(Messrs Moony, Wormtail, Padfoot, and Prongs)」という署名が刻まれています(HP3-10)。

この友情は、差別と孤立を余儀なくされる運命のもとに生きていたリーマスにとって、何物にも代えがたいものでした。のちのリーマスは「ジェームズたちのおかげで、自分は怪物ではなく友人を持つ人間なのだと思うことができた」という趣旨を語っています(HP3-17)。

第一次魔法戦争とその後

ホグワーツ卒業後、リーマスは不死鳥の騎士団に参加し、第一次魔法戦争をヴォルデモートと戦う側として戦いました。しかし1981年、ピーター・ペティグリューの裏切りによってジェームズとリリー・ポッターが殺され(HP3-17)、シリウス・ブラックはアズカバンに収監され(ただし真実は異なりました)、騎士団は解散しました。

ヴォルデモート失墜後の十数年間、リーマスは魔法界における狼人間差別のゆえに定職を持てず、極度の貧困の中で生活しました。「危険な怪物」と社会に位置づけられた狼人間は魔法界での雇用を得ることが極めて難しく(HP3-3など)、リーマスは転々と居場所を変えながら孤独な生活を送りました。着ていた衣服はすり切れ、体はやせ細り、顔は年齢以上に疲れた様相を帯びていました(HP3-05:ハリーが初めてルーピンを見た際の描写)。

ホグワーツへの帰還――3年生の「闇の魔術に対する防衛術」教授

教壇へ

1993年、アルバス・ダンブルドアの招聘を受け、リーマスはホグワーツで「闇の魔術に対する防衛術」の教授に就任しました。ダンブルドアが定期的に服用させる人狼薬(ウルフスベーン・ポーション)を用意し、変身をコントロールできるよう万全の準備が整えられました(HP3-17)。

初登場はホグワーツ特急車内です。車内に吸魂鬼(ディメンター)が乗り込んできた際、リーマスは光の呪文でこれを追い払い(HP3-05)、気絶したハリーにチョコレートを与えて回復させました。この一幕が、師弟関係の出発点となりました。

教師として

リーマスの授業は実践的で独創的でした。初回授業ではボガートを使って生徒の「最も恐れるもの」を笑いに変える術を教え(HP3-07)、生徒たちに「恐怖と向き合い、それを笑い飛ばす力」を実地で体験させました。ハーマイオニー・グレンジャーはリーマスについて「今まで最高の闇の魔術に対する防衛術の先生だった」と評し(HP3)、これは多くの生徒に共有された印象でした。

リーマスはハリーに対して特に熱心な指導を行いました。吸魂鬼に対してとりわけ強い反応を示したハリーのために、放課後に特訓の場を設け、守護霊の呪文(エクスペクト・パトロナム)を教えました(HP3-12)。守護霊の呪文は成人の魔法使いでも難しい高度な魔法ですが、リーマスはハリーが習得できると信じ、根気強く向き合いました。

真実の発覚

1994年6月、シリウス・ブラックが暴れ柳の下の地下道を通ってホグワーツに侵入したことが事態の転機となりました(HP3-17)。叫びの屋敷での対峙の末、リーマスはシリウスと再会し、真実が明らかになります――ピーター・ペティグリューこそが密告者であり、シリウスは無実であったということを。

しかし、服用を忘れた人狼薬の効果が切れたこと、そして雲が晴れて満月が顔を出したことで、リーマスはその場で変身してしまいました(HP3-20)。人間の理性を失った狼の姿でシリウスを追い、ピーターはその混乱に乗じて逃亡しました。変身から覚めたリーマスは、またしても最悪のタイミングで自分の狼人間の本性が友人たちの助けにならなかったことを深く悔やみました。

翌朝、セブルス・スネイプがリーマスの狼人間であるという事実を生徒・保護者に対して暴露しました(HP3-21)。これを受けてリーマスは教師職を辞し、ホグワーツを去りました。辞表とともに、ハリーへの手紙に「あなたに忍びの地図を返すことができず残念だ」という趣旨を書き残しており、最後まで誠実な態度を保っていました(HP3-22)。

第二次魔法戦争

不死鳥の騎士団への復帰

1995年、ヴォルデモートの復活に対応してダンブルドア不死鳥の騎士団を再結成すると、リーマスは再び騎士団の一員として活動を始めました(HP5)。グリモールド・プレイス12番地を拠点として情報収集・護衛任務などに当たり、ハリーたちを見守り続けました。

HP5冒頭、ハリーをプリベット通りからキングズ・クロス駅へ護送する「先進護衛隊」のメンバーとして登場し(HP5-03)、ハリーが長らく待ち望んでいた「本当の状況説明」をしてくれる大人としての役割を果たしました。

神秘部の戦い(HP5-35)では騎士団員として戦闘に加わり、ルシウス・マルフォイと交戦しました。

トンクスとの関係

HP6の時期、ニンファドーラ・トンクスの守護霊が突如「狼」の形をとるようになり、周囲からその変化を訝しむ声が上がりました(HP6-08など)。これはトンクスがリーマスに対して深い感情を抱いていることの表れでしたが、リーマス自身はその感情を頑なに退けようとしていました。

リーマスが自分の気持ちを封じた理由は、一言で言えば「自分が狼人間だから」でした。貧困で将来の見通しが立たない自分、毎月変身するという重荷を背負った自分が、若く才能あるトンクスの人生を台無しにしてはいけないという自己犠牲的な思いでした(HP7-05でハリーに語った内容を参照)。しかしトンクスはリーマスの拒絶を受け入れず、HP6終盤にはダンブルドアの葬儀の席でリーマスに公然と自分の気持ちを告げました(HP6-30)。

二人はホグワーツの戦いの前年、1996年末から1997年にかけて結婚しました(HP7時点で既婚)。

結婚・息子の誕生への葛藤

1997年のビル・ウィーズリーとフラー・デラクールの結婚式(HP7-08)において、リーマスが既婚者として出席していることが明らかになりました。しかしその直後、グリモールド・プレイスでハリーたちと合流した際(HP7-11)、リーマスは「妻の妊娠が発覚したが、自分が騎士団に残って彼らの旅を共にしたい」という申し出をしました。ハリーはこれを「責任から逃げようとしているだけだ」と厳しい言葉で拒絶し(HP7-11)、リーマスは激怒しながらもその場を立ち去りました。

のちにトンクスがルーピン家で無事に男の子を出産したと判明し、リーマスはハリーたちのところへ戻って来ました。激しく興奮し、喜びに溢れた様子で「男の子が生まれた、テッドという名前にした、ハリーに名付け親(ゴッドファーザー)になってほしい」と伝えました(HP7-25)。息子の名前はテッド・ルーピン(のちに「テディ」と呼ばれる)――トンクスの父テッド・トンクスにちなんだ名前でした。

テッド・トンクスはこの頃すでにマグル生まれを狙うヴォルデモートの手下に捕まり命を奪われており(HP7-22)、息子の名前には失われた義父への追悼の思いも込められていたと考えられます。

テッド・ルーピンが生まれたのは1998年4月上旬とされています(HP7-25の時系列から推定)。

ホグワーツの戦い

1998年5月2日、ホグワーツの戦いが始まると、リーマスは騎士団員として戦闘に加わりました(HP7-31以降)。

戦いの中でリーマスが死亡したことは、大広間に並べられた遺体としてハリーが目にする場面で描かれています(HP7-33)。

最初、ハリーには何が見えたのか分からなかった。それから、認識した。リーマス・ルーピンが横たわっていた。トンクスの隣に。(中略)若く、あまりにも若く見えた。

(HP7-33、意訳)

リーマスとトンクスは夫婦で同じ戦場で、同じ日に命を落としました。生まれたばかりの息子テッドを残して。

リーマスはスプリング・オニオンスペルを使っていたアントニン・ドロホフと交戦中に倒されたことが示唆されています(原作の描写をもとに推定)。

戦後、ハリーは石の番人(Resurrection Stone)を使ってリーマスの霊と一時的に対話しました(HP7-34)。「息子は恥ずかしくない父親を持てたと思うか」と尋ねるリーマスに、ハリーは「もちろんです」と答えました。リーマスは「あの子に会うのが楽しみだ」と穏やかに答え、ハリーを前に進む力で送り出しました。

この場面は原作の中でも特に心を揺さぶる瞬間のひとつです。

外見

リーマス・ルーピンはハリーが初めて会った時(HP3-05)、「ひどくくたびれた外見の魔法使い」と描写されています。衣服はすり切れており、茶色がかった髪には白いものが混じり、顔には若い年齢には似つかわしくない疲労の刻み込みがありました。

眠っている魔法使いは老いて見えた。(中略) 口の端から口ひげまで、一筋の傷跡があった。着ているローブはすっかり擦り切れていた。

(HP3-05、意訳)

実際の年齢は1993年時点で33歳ですが、それより遥かに老けて見えるこの外見は、狼人間としての苦しみに満ちた人生の反映であると同時に、長年の貧困と孤独の産物でもあります。

映画シリーズではデヴィッド・シューリス(David Thewlis)がリーマス・ルーピンを演じました。

性格・人物像

リーマス・ルーピンの人物像を語る上でまず挙げるべきは、温かさと誠実さです。ハリーが出会った大人の魔法使いの中で、リーマスは特別な位置を占めています。権威を振りかざさず、生徒一人ひとりの強みを見出し、「恐れることは人間として自然だ」と教える彼の姿勢は、ホグワーツの他の教師にはなかった種類の誠実さでした。

一方で、リーマスは深い自己嫌悪と他者に対する過剰な自己犠牲を抱えた人物でもあります。狼人間であるという事実を長年「恥」として隠し続け、自分を愛してくれようとする人々を「傷つけてはいけない」という理由で遠ざけ続けました。トンクスへの感情を封じ込めようとしたのも、妊娠中の妻のもとを離れようとしたのも、根底には「自分のような存在が人の人生に関わってはいけない」という誤った信念がありました。

ハリーとの師弟関係においては、父性的な愛情が滲み出ています。リーマスはハリーを「危険だからと特別扱いする大人」ではなく、「実力を持って向き合える存在」として対等に尊重しました。守護霊の特訓もボガートの授業でリーマスがわざとハリーをスネイプ(ハリーの最大の恐怖ではない)のボガートに向き合わせなかった配慮も、ハリーへの深い気遣いの表れです(HP3-07)。

また、ユーモアのある人物でもあります。疲れ果てた外見とは裏腹に、リーマスの言葉はしばしば温かいウィットに富んでいました。たとえばHP3初授業でのボガートへの対処を「笑いをもって戦う術」として教えた場面(HP3-07)は、彼の教育観そのものを体現しています。

魔法の能力

闇の魔術に対する防衛術

リーマスはこの分野の卓越した実力者です。ハリーたちが「今まで最高の先生」と評したことはよく知られていますが、それを裏付けるように、リーマスの授業は実践的かつ段階的に組み立てられていました。ボガートの授業(HP3-07)、吸魂鬼への対抗法(HP3-12)、人狼・河童・変え玉(Kappas and Hinkypunks)の授業(HP3)など、一貫して「知識を生かす力」を育てる教え方をしました。

守護霊の呪文

自らも「エクスペクト・パトロナム」を得意とし、その守護霊は「狼」の形をとります(狼人間そのものではなく、普通の狼です)(HP3-21など)。ハリーに対してこの難しい魔法を根気強く教えたことは、後のハリーの数多くの危機を救いました。

変身術への深い理解

いたずら仕掛け人として忍びの地図の作成に携わったことから、ホグワーツの魔法体系・術式・場所の把握において卓越した知識を持っていることが伺えます(HP3-10)。ただし、リーマス自身は動物もどきではありません。

対人魔法・実戦魔法

神秘部の戦い(HP5-35)やホグワーツの戦い(HP7)で実戦経験を積んでおり、熟練した戦闘魔法使いでもあります。ホグワーツの戦いにおける彼の貢献は原作で詳しく描かれませんが、騎士団の中核メンバーとして戦ったことは確かです。

所有物

糸杉材、ユニコーンの毛の芯、10インチ4分の1(ポッターモア)。糸杉材は伝統的に「勇敢な死」および「不滅」と関連づけられる木材であり、リーマスの生涯との象徴的な一致が指摘されることがあります。

人狼薬(ウルフスベーン・ポーション)

厳密には所有物ではなく定期的に服用する薬ですが、リーマスの生活に直結する重要な要素です。HP3時代にはスネイプが毎月この薬を調合してリーマスに届けていました(HP3-17)。薬を服用していれば満月に変身しても人間の理性を保ったまま過ごすことができ(ただし変身そのものは防げません)、安全な変身管理が可能です。

人間関係

リーマスとハリーの関係は、単なる師弟を超えたものです。リーマスはハリーの父ジェームズ・ポッターの親友であり、ある種の代理的な父性をハリーに向けていました。ハリーもまた、リーマスに「自分の父親を知っている大人」としての特別な信頼を寄せていました(HP3-17)。

この関係は時に葛藤を含みます。HP7でリーマスが「妻と子を置いて旅に加わりたい」と申し出た際、ハリーは容赦なく批判しました(HP7-11)。これはリーマスへの失望であると同時に、「逃げないでほしい」という強い願いの裏返しでもあったと言えます。最後に石の番人でリーマスの霊と会話できた瞬間は、二人の関係の集大成となりました(HP7-34)。

ジェームズ・ポッター・シリウス・ブラック・ピーター・ペティグリュー

いたずら仕掛け人の四人は、リーマスの人生における最も根本的な「居場所」でした。リーマス自身の言葉にあるように(HP3-17)、三人は狼人間というリーマスの秘密を知った上で、それでも友でい続けることを選びました。この経験が、リーマスの「自分でも人として生きる価値がある」という自己像の基盤となりました。

1981年のジェームズとリリーの死、シリウスの収監、ピーターの裏切りという連続した喪失は、リーマスを深く傷つけました。12年後に真実が明かされた時(HP3-17)、リーマスがシリウスに駆け寄った様子は、抑えていた感情の爆発でした。しかしその直後に変身してしまったことで、シリウスはアズカバンへの再収監を余儀なくされ、この再会は実を結びませんでした。

変身魔法の達人であり不死鳥の騎士団の同僚として出会った二人の関係が恋愛感情へと発展したのは、HP5から6にかけての時期と考えられます。トンクスの守護霊が「狼」の形に変わったことが二人の関係の端的な表れです(HP6-08)。

リーマスが長く関係を認めなかった理由は、自己嫌悪と自己犠牲からでした。しかしトンクスはその拒絶を受け入れず、最終的にリーマスを動かしました。二人は1996〜97年に結婚し、1998年4月に息子テッドをもうけ、そして同年5月2日に同じ戦場で命を落としました。

二人の間の年齢差(リーマスはトンクスより約13歳年上)やリーマスの狼人間という属性に対するトンクスの一切の躊躇のなさは、トンクスの人物としての大きさを示すと同時に、「出自よりも選択と愛情が人生を作る」というシリーズのテーマの体現でもあります。

セブルス・スネイプ

リーマスとスネイプの関係は、深い因縁に満ちたものです。ホグワーツ時代、スネイプはいたずら仕掛け人の四人から繰り返し嫌がらせを受けており(その中にシリウスとジェームズも含まれていました)、リーマスがそれを止めなかったという苦い記憶があります。

さらにシリウスは一度、満月の夜にスネイプを暴れ柳の地下通路へ誘い込もうとし、その先に変身したリーマスがいることを知った上でそうしようとしました(HP3-14)。ジェームズが直前に止めなければスネイプは狼人間のリーマスに遭遇していたかもしれず、スネイプはこの一件をリーマスの共謀と解釈し続けました。

HP3ではスネイプがリーマスの狼人間であるという事実を公開したことで(HP3-21)、リーマスは教師職を失いました。一方でスネイプはリーマスが在任中の1年間、人狼薬を調合し続けていました(HP3-17)。この複雑な関係は、単純な敵意というよりも古い傷と義務が混在するものです。

リーマスは息子テッドが生まれた時(HP7-25)の喜びを原作の中で最も生き生きと表現しており、「男の子が生まれた!ここへ来て正解だった!」という趣旨の台詞には、長い間自分を否定し続けてきた人物がはじめて何の留保もなく喜んでいる瞬間が凝縮されています。息子の名付け親にハリーを指名したことは、ハリーへの信頼と友情の究極の表現です。テッドは両親を知らずに育ちましたが、アンドロメダに養育され、ハリーが名付け親として見守り続けました。

名前の由来

「リーマス(Remus)」はローマ神話に由来します。ローマの建国神話において、ロムルス(Romulus)とレムス(Remus)は双子の兄弟であり、狼に育てられた(乳を与えられた)存在として知られています。狼によって生かされた者の名を持ちながら、狼人間であるという二重の皮肉は、J.K.ローリングの意図的な命名であることは明白です。なお、ロムルスがレムスを殺してローマを建国したという神話的結末は、ピーター・ペティグリューによるいたずら仕掛け人の裏切りとの悲劇的な連想をも想起させます。

「ルーピン(Lupin)」はラテン語・フランス語の「狼(lupus / loup)」に直接由来します。Lupin=「狼的な」「狼に関連する」という意味の形容詞であり、この苗字はリーマスが狼人間であることを、名前の段階で堂々と宣言しています。

ミドルネームの「ジョン(John)」はヘブライ語の「ヨハナン(Yochanan)」に由来し、「神は恵み深い」という意味を持ちます。

「リーマス・ルーピン(Remus Lupin)」という名前全体が「狼に育てられたレムス、そして狼」という二重の意味で、その生涯の根本的な主題を名前に刻んだ命名です。

J.K.ローリングのコメント

I think it's important that Lupin — in some ways Sirius and Lupin are both victims of prejudice, and I wanted to show prejudice against those who are different and how damaging it is. Werewolves are a symbol of the prejudiced; people who are set apart because of who they are, not what they've done.

(ルーピンは―ある意味でシリウスとルーピンはともに偏見の被害者です。私は「異なる者への偏見」と、それがいかに傷つけるかを描きたかったのです。狼人間は偏見を受ける人々の象徴です―自分がしたことではなく、自分が何者であるかというだけで、社会から切り離される人々の。)

J.K.ローリング、ライブインタビューより(詳細出典調査中)

Lupin's condition of lycanthropy was a metaphor for those illnesses that carry a stigma, like HIV and AIDS.

(ルーピンの狼人間という状態は、HIVやエイズのような、スティグマを伴う病気の比喩でした。)

J.K.ローリング、ポッターモアおよび複数インタビューより

このローリングの発言は、リーマス・ルーピンという人物が単なる「変身する魔法使い」ではなく、差別・偏見・スティグマという現実世界のテーマを象徴するキャラクターとして意図的に設計されたことを示しています。狼人間であるがゆえに定職に就けず、社会の端に追いやられたリーマスの人生は、社会的弱者への迫害の物語として読むことができます。

舞台裏

年表

年表

1960年

  • 3月10日 ― リーマス・ジョン・ルーピン誕生

1964〜65年頃

  • 幼少期(推定4〜5歳)にフェンリール・グレイバックに噛まれ、狼人間となる

1971年

  • 9月 ― ホグワーツ魔法魔術学校入学(グリフィンドール寮)
  • ジェームズ・ポッター、シリウス・ブラック、ピーター・ペティグリューと出会う

1971〜78年

  • ホグワーツ在学中、三人の友人が動物もどき変身を習得、いたずら仕掛け人を結成
  • 忍びの地図制作

1978年

  • ホグワーツ卒業

1978〜81年

  • 第一次魔法戦争に不死鳥の騎士団員として参加

1981年

  • 10月31日 ― ジェームズ・リリー・ポッター死亡、シリウス・ブラック収監
  • ヴォルデモート失墜後、職を失い孤独な放浪生活が始まる

1993〜94年

  • ホグワーツ「闇の魔術に対する防衛術」教授に就任
  • ハリーに守護霊の呪文を指導
  • 1994年6月、叫びの屋敷でピーター・ペティグリューの真実が判明するも変身して逃す
  • スネイプに狼人間であることを暴露され、辞職

1995年

  • 不死鳥の騎士団再結成に参加

1996〜97年頃

  • ニンファドーラ・トンクスと結婚

1998年4月

  • 息子テッド・ルーピン(テディ)誕生
  • ハリーを名付け親に指名

1998年5月2日

  • ホグワーツの戦いにて戦死

登場・言及箇所