浮遊呪文

浮遊呪文 (Levitation Charm) は、対象を持ち上げて宙に浮かせる呪文です。呪文は「ウィンガーディアム レヴィオーサ」(Wingardium Leviosa)。若い魔女や魔法使いが最初に習う呪文の一つとされ[1]、ハリーたちもホグワーツ1年生の呪文学の授業で教わりました[2]

基本情報

呪文: ウィンガーディアム レヴィオーサ(Wingardium Leviosa
分類: 呪文(charm)
効果: 対象を持ち上げ、宙に浮かせる
杖の動き: ビューン、ヒョイ[2:1]。手首を柔らかく保って振り、弾く[1:1]
考案者: Jarleth Hobart(1544年)[1:2]

効果

杖を対象に向けて呪文を唱えると、対象が持ち上がって宙に浮きます。浮いていられる時間は、対象の重さと術者の技量によって変わります。術者の腕と杖さばき、そして忍耐を試す呪文とされています[1:3]

浮かせられるのは物だけではありません。小さな生き物や子どもも浮かせられますが、いったん浮いてしまうと自分では進む方向を決められなくなります[1:4]。「ブックオブスペルズ」は、この呪文をお遊びの呪文と見なすべきではないとして、決闘での有用性と、物理的な障害物をどかせることを挙げています[1:5]

原作で実際に浮かされたものには、羽根[2:2]、山トロールの棍棒[2:3]、ゆで卵立て[3]、水槽から出てきた脳みそ[4]、オートバイのサイドカー[5]、小枝[6]、教会の信徒席、そして人間そのもの[7]と幅があります。

呪文学の授業

ハリーたちがこの呪文を習ったのは、1年生のハロウィーンの日、フリットウィック先生の呪文学の授業でした。羽根を浮かせる課題で、ロンは長い腕を風車のように振り回して唱えていましたが、羽根は動きません。隣にいたハーマイオニーが発音を正しました[2:4]

『ハリー・ポッターと賢者の石』第10章「ハロウィーン」

「ウィンガディアム レヴィオーサ!」

長い腕を風車のように振り回してロンが叫んでいる。ハーマイオニーのとんがった声が聞こえる。

「言い方が間違ってるわ。ウィン・ガー・ディアム レヴィ・オー・サ。『ガー』と長ーくきれいに言わなくちゃ」

日本語版では、ロンの誤った発音が「ウィンガディアム」、ハーマイオニーの正しい発音が「ウィンガーディアム」と、表記そのもので書き分けられています。ハーマイオニーは袖をまくって実演し、羽根を頭上一・二メートルまで浮かせてみせました[2:5]

「ガー」を長く伸ばすという注意は、「ブックオブスペルズ」の説明にも同じ形で書かれています[1:6]。杖の動きについて、フリットウィック先生は「ビューン、ヒョイ」と教えています[2:6]

山トロールとの遭遇

同じ日の夜、ハリーとロンは、女子トイレで山トロールと鉢合わせしたハーマイオニーを助けに入ります。ハリーがトロールの首にしがみつき、杖を鼻の穴に突き上げたところで、ロンが自分の杖を抜きました[2:7]

『ハリー・ポッターと賢者の石』第10章「ハロウィーン」

ハーマイオニーは恐ろしさのあまり床に座り込んでいる。ロンは自分の杖を取り出した――自分でも何をしようとしているのかわからずに、最初に頭に浮かんだ呪文を唱えた。

「ウィンガーディアム レヴィオーサ!」

突然棍棒がトロールの手から飛び出し、空中を高く高く上がって、ゆっくり一回転してからボクッといういやな音を立てて持ち主の頭の上に落ちた。

1544年の考案

J.K. ローリングがテキストを執筆したPS3ゲーム「ブックオブスペルズ」は、この呪文が生まれた経緯を伝えています[1:7]。この項目の日本語版のテキストは確認できていないため、以下は原文を示したうえで訳を添えています。

考案者は Jarleth Hobart という魔法戦士です。1544年、彼は魔法界がまだ成し遂げていなかったこと――自力で空を飛ぶこと――にとうとう成功したと思い込みました[1:8]

そこで彼は、ウィゼンガモットの主席魔法戦士を含む大勢の魔法使いを初飛行の見物に招きます。1544年7月16日、地元の教会の屋根に登り、いくつもの演説と国歌の斉唱を経て、空中へ身を躍らせました[1:9]

はじめは成功したように見えました。3分近く宙に留まったものの、そこから一歩も動きません。焦れた見物人のやじに応えて泳ぐような動作を始めますが、体は進みませんでした。重いブーツとローブが邪魔をしているのだと考えて脱ぎ捨てると、彼は10フィート(約3メートル)落下します。下から見ていた人々には、ブーツとローブがむしろ体を支えていたことが明らかになりました[1:10]

PS3ゲーム「ブックオブスペルズ」

Infuriated by the increasing laughter of the onlookers, Hobart continued to strip, until finally, on removal of his underpants, he plummeted to the earth completely naked, breaking sixteen bones and earning himself a fine for what the Chief Warlock described as 'outrageous silliness'.

(高まる笑い声に激高した Hobart は脱ぎ続け、ついに下着を取り去ったところで、まっ裸のまま地面に墜落した。16箇所を骨折し、主席魔法戦士が「とんでもない愚行」と呼んだ振る舞いによって罰金を科された)

恥をかいて家に戻った彼は研究を続け、やがて自分が発明したものの正体に気づきます。それは、物体を持ち上げて一定時間宙に浮かせる呪文でした[1:11]

2度目の実演には、また笑わせてもらえると期待した見物人が、前回より大勢集まりました。彼は小石から倒木までさまざまなものを浮かせてみせ、今度こそ成功します。ところが歓声に気をよくして、締めくくりに主席魔法戦士の帽子を浮かせたところ、主席がかつらをかぶっていたことが露見しました。その場で決闘となり、彼は主席のローブを頭の上に浮かせて逃げ延びています[1:12]

変種と関連する呪文

「ブックオブスペルズ」は、この呪文には数多くの変種があるとして Hover Charm浮遊術)・Rocket CharmFloating Charm の名を挙げ、そのうえで浮遊呪文が元祖にして最良のものだとしています[1:13]

ただし原作7巻のなかでは、浮遊術が浮遊呪文と同じ呪文なのか、唱える言葉も効果も異なる別の呪文なのかは書かれていません。

日本語版の表記について

原作日本語版の呪文の表記は巻によって揺れています。『賢者の石』は「ウィンガーディアム レヴィオーサ」、『不死鳥の騎士団』と『死の秘宝』は「ウィンガーディアム レビオーサ! 浮遊せよ!」と、意味の訳を添えた形です。『呪いの子』の日本語版は「ウィンガーディアム レヴィオーサ! 浮遊せよ!」となっています。
PS3ゲーム「ブックオブスペルズ」の日本語版では、この呪文の名前は「浮上魔法」、杖の動きは「スッと下ろしてヒュッ」と訳されています。静山社版の原作の訳語とは異なります。

使用例

使用者 場面 効果・結果
ハーマイオニー 『賢者の石』第10章 呪文学の授業で羽根を浮かせ、正しい発音を実演する[2:8]
ロン 『賢者の石』第10章 山トロールの棍棒を浮かせ、頭上に落として気絶させる[2:9]
ハリー 『不死鳥の騎士団』第31章 O・W・Lの実技試験で、ゆで卵立てを回転させる課題に使う[3:1]
ドラコ・マルフォイ 『不死鳥の騎士団』第31章 同じ試験でワイングラスを浮かせるが、落として割る[3:2]
ハリー 『不死鳥の騎士団』第36章 神秘部の戦いで、体に絡みついた脳みそを振り払う[4:1]
ハリー 『死の秘宝』第4章 分離したオートバイのサイドカーを浮かせ、空中に留める[5:1]
ロン 『死の秘宝』第32章 小枝を操って暴れ柳の結び目を突かせ、木の動きを止める[6:1]
デルフィー 『呪いの子』第四幕 教会の信徒席を浮かせ、ハリーめがけて叩きつける[7:1]
ドラコ・マルフォイ 『呪いの子』第四幕 沈黙の呪文で口を封じたデルフィーを浮かせ、連れ去る[7:2]

登場・言及箇所

脚注


  1. PS3ゲーム「ブックオブスペルズ」(2012年)。J.K. ローリング執筆のゲーム内テキスト ↩︎ ↩︎ ↩︎ ↩︎ ↩︎ ↩︎ ↩︎ ↩︎ ↩︎ ↩︎ ↩︎ ↩︎ ↩︎ ↩︎

  2. 『ハリー・ポッターと賢者の石』第10章「ハロウィーン」 ↩︎ ↩︎ ↩︎ ↩︎ ↩︎ ↩︎ ↩︎ ↩︎ ↩︎ ↩︎

  3. 『ハリー・ポッターと不死鳥の騎士団』第31章「ふ・く・ろ・う」 ↩︎ ↩︎ ↩︎

  4. 『ハリー・ポッターと不死鳥の騎士団』第36章「「あの人」が恐れた唯一の人物」 ↩︎ ↩︎

  5. 『ハリー・ポッターと死の秘宝』第4章「七人のポッター」 ↩︎ ↩︎

  6. 『ハリー・ポッターと死の秘宝』第32章「ニワトコの杖」 ↩︎ ↩︎

  7. 『ハリー・ポッターと呪いの子』第四幕第11場 ↩︎ ↩︎ ↩︎